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聖杯の探求
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想像してみましょう。あなたは聖杯を探しもとめる、アーサー王につかえる騎士のひとりです。ただし、この探求の旅の舞台はログレス王国ではなく、ポルトガルの中心です。ヨーロッパ西部に広がるこの風景のなかを、かつてはテンプル騎士団の騎士やシトー会の修道士が闊歩していました。これを2日間のコースのテーマに、神話世界の地理を描きだし、空想の探求の旅にでかけましょう。探求物語の英雄たちが一堂に会するトマール(Tomar)で、旅はクライマックスをむかえます。
旅のスタート地点はアルコバッサ(Alcobaça)、シトー派修道会によって建造された修道院です。シトー派修道会は、聖杯探求の異教風の物語を、キリスト教の美徳の教えにしたがい翻案しました。この修道院はまた、ポルトガルにおける最初のゴシック様式教会であり、ガラハッドが夜警に立ち、自らの使命をさとったウーゼル・ペンドラゴンの大修道院を思わせます。そこから、アルジュバロッタ(Aljubarrota)の戦場へと向かいます。ここは、かのランスロットがジンゼストレでライオネル王を打ち破ったように、ポルトガル王ジョアン1世(D. João I)がカスティーリャ軍を打ち破り、ポルトガルの独立を確たるものにした戦の舞台となったところです。サンタ・マリア・ヴィトーリア修道院(Mosteiro de Santa Maria da Vitória)は、これを記念して造られた壮大華麗な建築物で、なかでもその白眉は未完の礼拝堂(Capelas Imperfeitas)です。
そのまま騎士物語の舞台を進んでいきましょう。セーラス・デ・アイレ・イ・カンデエイロス自然公園(Parque Natural das Serras de Aire e Candeeiros)には、ポルジェ・デ・ミンデ(Polje de Minde)のように現れたり消えたりする湖や、深い穴のあいた美しい洞窟があり、フォライアの地さながらです。人の訪れを拒むかのようにテージョ川(Rio Tejo)にうかぶ小島にたたずむアルモウロル城(Castelo de Almourol)は、テンプル騎士団の重要な砦のひとつであり、巨人や貴婦人の登場するさまざまな伝説の想像上の舞台となってきました。
2日目は、秘教的なシンボルで満ちた町、トマールにあてましょう。サンタ・イリア修道院(Convento de Santa Iria)では、殉教の場に建つその像に目がとまります。土台をよく見てみましょう。アーサー王を暗示する牛の像があります。牛は北の方角を向き、その視線をたどれば、アルクトゥルスが輝く牛飼座が見えます。テンプル騎士団の霊廟であるサンタ・マリア・ド・オリヴァル教会(Igreja de Santa Maria do Olival)では、ソロモン王の印とダビデの星に気が付きます。もしかしたらこの教会は、ガウェインとエクターの幻視の舞台となった赤いオリーブの教会堂かもしれません。
そこから30キロほど行くと、ドルネスの塔(Torre atalaia de Dornes)——騎士ダリデスの恋人の「奇妙な城」——があります。よりトマール寄りに、杯形の天然の貯水池があります。その名「アグロアル」(Agroal)は、文字を並べかえると「オ・グラール」(O Graal,「聖杯」)に。町の中心にはナバオンの水車 (roda do Rio Nabão)がかかり、ポルトガル初代国王アフォンソ・エンリケス(D. Afonso Henriques)の「ポルトグラル」(Portugral)と読める印章を連想させます。ひょっとしたらこれは「聖杯の港」(ポルト・ド・グラール)という意味なのでしょうか?
マタ・ドス・セテ・モンテス(Mata dos Sete Montes)を訪ねるとそこは「ウルガンダの庭」、深い緑のなかに小さなシャロリーニャ(Charolinha)が現れます。山を上り、城とキリスト修道院(Convento de Cristo)を訪れます。これは、内部に聖廟のあるエルサレムの嘆きの壁を模したもので、マヌエル様式の教会は、ソロモンの神殿を模して設計されています。美しい円形のシャロラ(Charola)では、テンプル騎士団の騎士たちが、祭壇、つまり円卓を囲み、ミサを行っていました。この場所こそ、聖杯が現れ、この旅がクライマックスをむかえる心の王宮かもしれません。なぜなら、この探求の旅の「聖杯」は、杯形をしたものではなく、めくるめくすばらしい風景と史跡に出会うことなのですから。
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