「コインブラ(Coimbra)は別れのときにいよようるわし」-この町の有名なファドの一節は、それを歌う大学生のロマンチックな心情そのままである。
コインブラのファドは、リスボンのファドと使う楽器はよく似ていますが、その歌詞はよりアカデミックで、歌の背景も違えば、声の印象も違います。
コインブラのファドは、リスボン(Lisboa)やポルト(Porto)といった都市から来た学生たちが、ギターやさまざまな歌い方を持ち込んで発展しました。報われない恋を歌って眠れぬ夜を過ごし、窓のもとで恋人にセレナーデを歌う-学生たちにとってファドは、学生生活の思い出を託すのにぴったりでした。
事実、ファドを歌うのは男子学生のみです。そのいでたちは、黒いスーツにマントという、伝統的な学生服です。一番の舞台は、卒業を記念して行われる5月の伝統行事である「リボン焼き祭り」ケイマ・ダス・フィタス(Queima das Fitas)です。旧カテドラルの門の前でセレナーデを歌うノイテ・ダ・セレナータ(Noite da Serenata)も、コインブラならではのひとときです。
学生たちのなかには、青春時代の思い出にとどまらず、生涯をファドとともに歩む者もいます。アドリアーノ・コレイア・デ・オリヴェイラ(Adriano Correia de Oliveira)やジョゼ・アフォンソ(José Afonso)は歌手として、アルトゥール・パレーデス(Artur Paredes)、カルロス・パレーデス(Carlos Paredes)はギタリストとして名を馳せました。